2010年12月25日

モーツァルト効果の功罪

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世界で最も愛され、知られているクラシック作曲家の一人がヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトでしょう。
モーツァルトは、1756年1月27日に生まれ、1791年12月5日、35歳という若さで亡くなりました。
モーツァルトの作曲方法は一風変わったものです。
一般的には楽器などで音を確認しながら作曲しますが、モーツァルトは頭の中だけで音楽を作り、その音楽を楽譜に書き写すという作曲方法でした。
しかも同時に2篇の曲を作ったり、他の人と会話をしながら曲を書いていたそうです。
バッハなどの偉大な作曲家でも、譜面を見ると、あちこち手直しした跡が見て取れます。
一方、モーツァルトの楽譜には書き直しが少ない、というのも特徴です。
作曲家は本来、試行錯誤の末に作り出すのですが、まさに頭の中から音楽が湧き出してくるモーツァルトにとって書き直しの必要はなかったようですね。
おまけに彼の作品には、みなさんが知っているようなオペラや交響曲などの大作も含まれています。
長いものでは1時間を超える曲も作っていたモーツァルト。
彼は若干35歳という若さでこの世を去っていながら、作品は700以上もあると言われています。
この驚くべき作曲スピードは、5歳にしてすでに作曲を始めていたというエピソードと無関係ではないでしょう。
モーツァルトにとって作曲は、呼吸するように当然のことだったのです。
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「モーツァルト効果」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
モーツァルトのクラシック曲を聴くと頭が良くなる、などと言われているものです。
モーツァルト効果の発端はある実験からでした。
大学生を2つのグループに分け、空間的思考能力を測る知能検査を行う、という実験です。
一方のグループにはモーツァルトの「二台のピアノのためのソナタ、二長調、K448」の第一楽章を10分ほど聞かせ、もう一方のグループには何も聞かせなかったり、他のクラシックを聞かせたました。
すると、モーツァルトの曲を聞かせたグループの知能検査の成績が一時的に目立ってよくなっていたのです。
 
この実験によって「モーツァルトの曲を聞くと、知能指数(IQ)が平均して8~9ポイント高くなる」ということが示され、多くのメディアがこの話題を取りあげました。
ところが、この実験結果は後に過大解釈されてしまい、「モーツァルト効果」は思わぬ影響を与えます。
 
その最たるものが、1998年にジョージア州のゼル・ミラー知事発案の法案可決でしょう。
知事は上記の過大解釈された「モーツァルト効果」の話を受けて、州内で生まれた子どもすべてにモーツァルトなどのクラシック音楽が入ったCDやカセットテープを配布するという法案を提出。10万ドルあまりの予算を支出するこの法案は、なんと議会を通ってしまったのです。
 
ほかのいくつかの州でも同様のプログラムが実施され、フロリダ州では州の保育所で毎日30分間クラシック音楽を流すことが決められました。
乳幼児の知的発達をモーツァルトの曲が促進するという科学的根拠はありませんでしたが、モーツァルト効果が一人歩きしてした結果、このような珍事を招いたのです。
 
モーツァルトは、こんな言葉を残しています。
 
現実的な望みを持つことが大事なのでしょうが、容易に得られる望みではあまり幸せにはなれないでしょう。
確かに、音楽を聴くだけで頭が良くなる、というのは都合がよすぎます。
モーツァルト効果が実際以上にうたわれ、信じられている現状を見ると、この言葉はモーツァルトからの皮肉をこめた警告に聞こえてなりません。
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