2011年1月 2日

キヤノンが世界のキヤノンになれた理由

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「右手にカメラ、左手に事務機」をスローガンに猪突猛進していたキヤノン。しかし、社長の御手洗氏は突然こんなことを言いだしました。
「事業というものがそんなにうまくいくはずがない。いつの時代でも、いいこともあれば悪いこともある。こういう時こそ気持ちを引き締めなければならないし、この際、社会に何かお返しすることをみんなで考えたらどうか?」
 
その一声から社員たちはたくさんのアイデアを出しました。
どうせならばキヤノンにしかできないことをやりたい――
そう考えた御手洗氏の頭に、数年前、米スタンフォード大学の研究室で見た、「盲目の少女がある器具を用いて、点字ではなく普通に印刷された文字をすらすら読んでいた光景」が鮮明に浮かび上がりました。
 
さっそく社員を調査に行かせたところ、「これは本物。多くは売れないかもしれないが、世の中が必要としているならやるべき」という結論にいたったのです。
その製品「オプタコン」は日本の盲人団体でもすでに知られている盲人用文字読取装置。ただ、輸入販売しようというところはどこにもありませんでした。
オプタコンはカメラでとらえた文字をピンの振動に変えて、ピンに指で触れて読み取るという原理のものでしたが、非常に微妙な動きがポイントであるので、故障時などのアフターサー ビスがとても大変になります。
また、単に機械を売るだけでなく、盲人が使いこなせるようになるための訓練士も必要となるため、どこの会社も手がけようとはしなかったのです。
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当時、受け入れ方法を検討することになっていた総合企画室の担当者が、御手洗氏に「ニーズはあるが大変な経費がかかり、キヤノンでやり切れるかどうか自信がない」と報告しました。
御手洗氏は 「欲しいという声があるのにできないとはどういうことだ。できるようにしたらどうだ」と激怒。そしてその担当者に、正式に事業の担当になるよう命じたのです。
 
その担当者が「自分で切実な問題を抱えた人や厚生省にいた人などがふさわしいのでは」と辞退したところ、「困っている人がいるのに見て見ぬふりをするのか! キヤノンにそんな大馬鹿者がいるとは思わなかった」とさらに烈火のごとく怒ったといいます。
 
後日、担当者が御手洗氏に「これをしたからといって世間が評価してくれるとは限りません。盲人のためにやっていると言っても、キヤノンは宣伝のために盲人を利用しているのか、と言われます。キヤノンはいい会社だ、というようなことにはならないのではないでしょうか」と言ったそうです。
彼も人間ですからいつも前向きに、ポジティブにという訳にはいかなかったようですね。
 
自分の将来は大丈夫だろうか?
これによって出世は出来るのだろうか?
この会社を信じていいのだろうか?

こうした悩みから、なかなか行動できなくなってしまいました。
しかし、この不安に上手に対処する方法を御手洗氏は知っていたのです。
御手洗氏は「陰徳というものがある。善というものは隠れてするものだ」とその担当者に伝えました。
 
これによってキヤノンはこのオプタコンの販売を開始。いまでもこの製品は販売されています。
毎年1億円近い赤字を計上しながらも、日本はおろか欧米各国に輸出し、大いに喜ばれているそうです。
あなたが人生の選択で迷われたとき、「陰徳」という言葉を思い出してみてはいかがでしょうか。
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